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[ti:] |
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[al:] |
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[offset:0] |
| [00:00.00] |
こうして僕は |
| [00:02.17] |
六年前 サハラ砂漠で飛行機が故障するまで |
| [00:06.39] |
心を許して話せる相手に出会うこともなく |
| [00:10.25] |
一人で生きてきた |
| [00:21.22] |
飛行機は エンジンのどこかが壊れていた |
| [00:25.38] |
整備士も乗客も乗せていなかったので |
| [00:29.73] |
僕は難しい修理の仕事を一人でやり遂げるしかなかった |
| [00:34.16] |
死活(しかつ)問題だった |
| [00:38.26] |
飲み水は一週間分あるかないかだった |
| [00:44.48] |
最初の夜 |
| [00:46.36] |
僕は人の住む場所から千マイルも離れた砂の上で眠った |
| [00:53.66] |
大海原(おおうなばら)を筏(いかだ)で漂流する遭難者より |
| [00:56.41] |
ずっと孤独だった |
| [00:58.18] |
だから 夜明けに小さな可愛らしい声で起こされた時 |
| [01:04.47] |
僕がどんなに驚いたか想像してみてほしい |
| [01:09.60] |
その声は こう言った |
| [01:14.26] |
「お願い、羊の絵を書いて。」 |
| [01:18.07] |
「え?」 |
| [01:19.16] |
「羊を書いて。」 |
| [01:21.60] |
雷(かみなり)に打たれたみたいに飛び起きると |
| [01:24.45] |
目を擦って辺りを見回した |
| [01:27.23] |
そこには、とても不思議な子供が一人いて |
| [01:31.90] |
僕を真剣に見つめていた |
| [01:36.48] |
僕は突然現れたその子供を目を丸くして見つめた |
| [01:41.72] |
何度も言うけれど |
| [01:44.11] |
人の住む所から千マイルも離れていたのだ |
| [01:47.66] |
しかしその子は |
| [01:51.34] |
道に迷っているようには見えなかった |
| [01:53.87] |
疲れや飢えや渇きで死にそうになっているようにも |
| [01:58.74] |
怖がっているようにも見えなかった |
| [02:01.50] |
人の住む所から千マイルも離れた砂漠を真ん中にいながら |
| [02:07.91] |
途方に暮れた迷子と言った様子は少しもなかったのだ |
| [02:14.59] |
ようやく口が聞けるようになると、僕はその子に尋ねた |
| [02:20.13] |
「君は、こんな所で何をしているの?」 |
| [02:27.53] |
しかしその子はとても大切なことのように 静かに繰り返すだけ |
| [02:35.40] |
「お願い、羊の絵を書いて。」 |
| [02:39.71] |
馬鹿げた話だが |
| [02:41.31] |
人の住む所から千マイルも離れて |
| [02:44.70] |
死の危険に曝(さら)されているというのに |
| [02:47.13] |
僕はその子に言われるままに |
| [02:50.75] |
ポケットから一枚の紙切れ(かみきれ)と万年筆を取り出していた |
| [02:58.13] |
だけどそこで |
| [02:59.19] |
僕が一生懸命勉強してきたのは |
| [03:02.37] |
地理と歴史と算数と文法だけだったことを思い出して |
| [03:06.22] |
少し不機嫌になりながら |
| [03:08.77] |
絵は書けないんだと その子に言った。 |
| [03:14.62] |
「そんなの構わないよ。羊を書いて。」 |
| [03:20.75] |
僕は羊の絵なんか書いたことがなかったので |
| [03:24.03] |
自分に書けるたった二つの絵のうちの一つを書いてあげた |
| [03:27.86] |
ボアの外側の絵だ |
| [03:32.55] |
その時男の子がこういうのを聞いて |
| [03:34.94] |
僕はビックリした |
| [03:38.87] |
「違う違う。 |
| [03:39.81] |
ボアに飲み込まれた象なんて要らないよ。 |
| [03:43.54] |
ボアはとっても危険だし、 |
| [03:45.42] |
象はけっこう場所塞(ふさ)ぎだから。 |
| [03:48.41] |
僕の所はとっても小さいんだ。 |
| [03:52.38] |
ほしいのは羊。羊を書いて。」 |
| [03:57.71] |
そこで僕は、羊を書いた。 |
| [04:05.19] |
「んー、ダメだよ。この羊はひどい病気だ。 |
| [04:11.10] |
違うのを書いて。」 |
| [04:14.73] |
僕は書き直した。 |
| [04:17.60] |
男の子は僕を気遣って、優しく微笑んだ。 |
| [04:22.98] |
「よく見て、これは羊じゃあないでしょう。 |
| [04:26.68] |
雄羊(おひつじ)だよね。 |
| [04:28.48] |
角(つの)があるもの。」 |
| [04:28.48] |
そこで僕はまた書き直した。 |
| [04:35.41] |
けれどそれも前の二つと同じように拒絶された。 |
| [04:40.24] |
「この羊は年を取りすぎているよ。 |
| [04:43.46] |
僕、長生きする羊がほしいの。」 |
| [04:48.33] |
我慢も限界に近づいていた |
| [04:51.56] |
修理を始めなければと焦っていた |
| [04:54.99] |
僕は |
| [04:56.72] |
ざっと書きなぐった絵を男の子に投げ渡した |
| [05:02.50] |
「これは羊の箱だ。 |
| [05:03.71] |
君が欲しがっている羊はこの中にいるよ。」 |
| [05:08.99] |
すると驚いたことに |
| [05:11.12] |
この小さな審査員(しんさいん)の顔が |
| [05:14.04] |
ぱっと輝いたのだ |
| [05:17.46] |
「ぴったりだよ。 |
| [05:19.83] |
僕がほしかったのは、この羊さ。 |
| [05:23.72] |
ねえ、この羊、草をいっぱい食べるかな?」 |
| [05:27.88] |
「どうして?」 |
| [05:30.32] |
「僕の所はとっても小さいから。」 |
| [05:35.05] |
「大丈夫だよ。 |
| [05:36.43] |
君にあげたのはとっても小さな羊だからね。」 |
| [05:42.33] |
「そんなに小さくないよ。 |
| [05:45.22] |
あれ、羊は寝ちゃったみたい。」 |
| [05:48.08] |
こうして僕は |
| [05:51.13] |
この小さな王子さまと知り合いになった |
| [05:59.53] |
王子さまがとこから来たのか分かるまで |
| [06:02.32] |
かなり時間がかかった |
| [06:05.53] |
王子さまは |
| [06:07.66] |
僕にはたくさん質問してくるのに |
| [06:10.86] |
こちらからの質問にはほとんど耳を貸さなかったのだ |
| [06:16.56] |
少しずつ全てが明らかになっていったのは |
| [06:20.05] |
王子さまが偶々口にした言葉からだった |
| [06:24.99] |
それは |
| [06:27.18] |
初めて僕の飛行機を見た時のことだ |
| [06:30.44] |
「何、これ?」 |
| [06:33.59] |
「飛行機。空を飛ぶんだ。僕の飛行機さ。」 |
| [06:40.58] |
空を飛べると自慢げに話していたら |
| [06:43.03] |
王子さまは大声で言った |
| [06:47.13] |
「え?じゃあ、君は空から落(お)っこちてきたんだ。」 |
| [06:51.66] |
「まあ、そうだなあ。」 |
| [06:54.78] |
「あ、それは可笑しいね。」 |
| [06:59.39] |
王子さまは可愛い声で笑い出したが |
| [07:01.78] |
僕はかなりいらいらした |
| [07:05.72] |
自分を襲った災難を |
| [07:07.68] |
真面目に受け取ってほしかったのだ |
| [07:11.71] |
しかし王子さまは続けてこう言った |
| [07:15.38] |
「それじゃ、君も空から来たんだね。 |
| [07:20.84] |
どの星から来たの?」 |
| [07:24.59] |
その瞬間 |
| [07:25.81] |
王子さまがなぜここにいるのかという疑問に |
| [07:28.96] |
さっと光が差し込んだように感じて |
| [07:32.39] |
僕はすぐに尋ねた |
| [07:36.12] |
「君は、よその星から来たのかい?」 |
| [07:40.78] |
しかし王子さまは答えず |
| [07:43.35] |
飛行機を見て、そっと首を振っただけだった |
| [07:48.78] |
「これに乗ってきたのなら、 |
| [07:50.75] |
そんなに遠くからじゃないよね。」 |
| [07:52.71] |
そう言うと 物思いに沈んでいった |
| [07:57.74] |
王子さまはポケットから羊の絵を取り出して |
| [08:02.97] |
大切そうに眺めていた。 |
| [08:06.72] |
「君はどこから来たの? |
| [08:09.38] |
その羊をどこへ連れて行くつもりなの?」 |
| [08:14.23] |
「この箱がいいのわね。 |
| [08:16.61] |
夜になると、羊の小屋になるって所だよ。」 |
| [08:20.42] |
「そうだね。 |
| [08:23.79] |
いい子にしていたら、 |
| [08:25.50] |
昼間羊を繋いでおく綱もあげるよ。 |
| [08:29.18] |
それに、綱を結んでおく杭(くい)もね。」 |
| [08:33.24] |
「羊を繋いでおくの? |
| [08:35.85] |
可笑しいよ、そんなの。」 |
| [08:38.45] |
「でも、繋いでおかなかったら、 |
| [08:41.22] |
勝手にあちこち歩き回って、 |
| [08:43.71] |
どこかいなくなっちゃうだろ。」 |
| [08:46.82] |
すると、僕の友達はまた笑い出した。 |
| [08:51.98] |
「羊がどこへ行くっていうのさ。」 |
| [08:55.22] |
「どこにでも。ずっとまっすぐ歩いていって…」 |
| [09:00.56] |
「大丈夫だよ、僕の所は本当に小さいからね。 |
| [09:05.31] |
まっすぐに行っても |
| [09:07.65] |
そんなに遠くには行けないよ。」 |
| [09:15.20] |
こうして僕は |
| [09:16.90] |
二つ目のとても大切なことを知った |
| [09:20.81] |
王子さまのいた星は家一軒(いっけん)より |
| [09:23.88] |
やや大きいくらいの大きさなのだ。 |
| [09:28.56] |
それほど驚きはしなかった |
| [09:31.79] |
地球や木星・火星・金星のように |
| [09:36.22] |
名前のある巨大な星以外にも |
| [09:39.10] |
望遠鏡でも見つからないほど小さな星が |
| [09:42.27] |
何百とあることを知っていたからだ |
| [09:46.77] |
天文学者がそんな星を発見すると |
| [09:49.73] |
名前の代わりに番号を付ける |
| [09:53.24] |
例えば、小惑星325と言ったように。 |
| [10:00.14] |
王子さまがやって来た星は |
| [10:02.38] |
小惑星B612だと思う |
| [10:07.46] |
1909年にトルコの天文学者が |
| [10:11.14] |
一度だけ望遠鏡で観測した星だ |
| [10:16.25] |
天文学者は国際天文家会議で |
| [10:19.34] |
自分の発見について堂々と発表した |
| [10:23.35] |
しかしその時は |
| [10:24.89] |
服装のせいで |
| [10:26.04] |
誰にも信じてもらえなかった |
| [10:30.00] |
大人なんて そんなもんだ |
| [10:33.43] |
しかし |
| [10:34.49] |
小惑星B612に |
| [10:36.32] |
名誉挽回(めいよばんかい)の幸運が訪れた |
| [10:40.89] |
トルコの独裁者が |
| [10:42.52] |
国民にヨーロッパ風の服装を着るように命令し |
| [10:46.72] |
従わなければ死刑ということになったのだ |
| [10:51.34] |
そこで天文学者は |
| [10:53.12] |
1920年、今度は |
| [10:56.30] |
もっと洗練(せんれん)された服装で同じ発表を繰り返した |
| [11:01.66] |
この時はみんなが彼の言うことを信じた。 |
| [11:10.93] |
この星のことをこんなに詳しく話して |
| [11:13.90] |
番号まで教えるのは |
| [11:15.81] |
大人たちのせいだ |
| [11:19.02] |
大人は数字が好きだ |
| [11:21.63] |
数字以外には興味がない |
| [11:24.95] |
新しい友達のことを話しても |
| [11:27.70] |
どんな声か |
| [11:29.04] |
どんな遊びが好きか |
| [11:31.22] |
蝶々を集めているかと言った |
| [11:33.56] |
大切なことは何も聞いて来ない |
| [11:37.63] |
何歳か |
| [11:39.18] |
何人兄弟か |
| [11:41.25] |
お父さんの年収はいくらかと言った |
| [11:44.68] |
数字のことばかり聞いて来て |
| [11:47.12] |
それですっかり知ったつもりになる |
| [11:51.26] |
「王子さまは本当にいたよ。 |
| [11:53.85] |
可愛かったし、笑っていたし、 |
| [11:56.72] |
羊を欲しがっていた。 |
| [11:59.33] |
だって、羊を欲しがるってことは、 |
| [12:02.56] |
間違いなくその人が |
| [12:03.97] |
本当にいるってことの証拠だからね。」 |
| [12:08.09] |
こんな風に話しても |
| [12:10.17] |
大人は肩を竦(すく)め |
| [12:12.16] |
子供扱いするだけだ。 |
| [12:15.47] |
しかし |
| [12:16.79] |
「王子さまが来た星は小惑星B612だよ」と言えば |
| [12:21.96] |
大人は納得して |
| [12:24.04] |
それ以上余計なことは聞いて来ない |
| [12:28.97] |
大人なんてそんなもんだ |
| [12:31.76] |
でも 悪く思ってはいけないよ |
| [12:35.65] |
子供は大人に対して |
| [12:37.97] |
広い心で接してあげなきゃね |
| [12:42.47] |
でも 生きるということがどういうことなのか |
| [12:46.18] |
よく分かっている僕たちには |
| [12:48.72] |
数字なんかどうでもいい |
| [12:53.25] |
本当だったら僕は |
| [12:55.30] |
この物語をお伽話のように始めたかった |
| [13:01.23] |
「昔々、自分より本の少し大きいだけの星に暮らしている |
| [13:06.94] |
小さな王子さまがいました |
| [13:10.39] |
王子さまは友達を欲しがっていました。」 |
| [13:16.22] |
生きるということがどういうことなのか分かっている人には |
| [13:20.22] |
こういう言い方のほうが |
| [13:21.86] |
ずっと本当らしく聞こえるだろう |
| [13:25.96] |
僕は この本を軽々しく読まれたくない |
| [13:32.53] |
こう言った思い出話を語ることは |
| [13:35.61] |
僕にとって 本当に辛い |
| [13:40.60] |
僕の友達が羊を連れて行ってしまって |
| [13:44.03] |
もう六年になる |
| [13:48.24] |
こうして彼のことを書くのは |
| [13:51.66] |
彼を忘れないためだ |
| [13:56.18] |
友達を忘れてしまうのは悲しい |
| [13:59.86] |
誰にでも友達がいるわけではない |
| [14:03.51] |
それに |
| [14:04.85] |
僕も数字にしか興味のない大人になってしまうかもしれない |
| [14:12.78] |
そうならないために僕は |
| [14:15.23] |
絵の具箱と鉛筆を買った |
| [14:19.27] |
六歳でボアの外側と内側を書いて以来 |
| [14:22.48] |
何も書いていなかった僕にとって |
| [14:26.19] |
この年でもう一度絵を書くのは大変なことだった |
| [14:32.57] |
出来るだけ |
| [14:34.08] |
本物そっくりな肖像画(しょうぞうが)を書いてみるつもりだ |
| [14:38.61] |
でも ちゃんと書けるかどうかは |
| [14:41.95] |
自信がない |
| [14:44.53] |
一枚いい物が書けても |
| [14:46.84] |
その次はまるで似ていないかもしれない |
| [14:51.15] |
背丈(せたけ)が難しいし |
| [14:53.35] |
服の色も迷ってしまう |
| [14:57.03] |
手探りでやってみるが |
| [14:59.21] |
もっと大事な細かい部分を間違えてしまうかもしれない |
| [15:04.51] |
でも そこは大目に見てほしい |
| [15:10.06] |
王子さまは |
| [15:11.52] |
詳しいことは何も説明してくれなかったのだ |
| [15:16.55] |
恐らく彼は |
| [15:18.34] |
僕のことを自分と同じ仲間だと思ったのだろう |
| [15:24.89] |
しかし残念ながら僕は |
| [15:27.52] |
箱の中の羊を見ることが出来ない |
| [15:32.91] |
少しばかり大人になってしまったのかもしれない |
| [15:38.74] |
年を取ったのだ |
| [15:45.77] |
日を追うごとに僕は |
| [15:48.15] |
王子さまの星のことや |
| [15:50.35] |
そこからの旅立ち |
| [15:52.79] |
これまでの旅について知るようになっていった |
| [15:57.26] |
王子さまが偶々口にした言葉で |
| [16:00.30] |
少しずつ様子が分かってきた |
| [16:04.98] |
こうして三日目に |
| [16:06.85] |
バオバブをめぐる大騒動を知った |
| [16:11.47] |
これも、羊のお陰だった |
| [16:15.91] |
王子さまが急に心配らしくなって |
| [16:19.07] |
こう聞いてきたのだ |
| [16:21.90] |
「羊が小さな樹も食べるって、 |
| [16:24.36] |
本当なんでしょう?」 |
| [16:26.83] |
「うん、本当だよ。」 |
| [16:29.69] |
「あぁ、よかった。」 |
| [16:33.05] |
羊が小さな樹を食べることが |
| [16:35.70] |
なぜそんなに大事なことなのか |
| [16:38.29] |
僕には分からなかった |
| [16:41.14] |
しかし 王子さまは更にこう聞いてきた |
| [16:45.96] |
「だったら、バオバブも食べるよね。」 |
| [16:50.34] |
僕は王子さまに |
| [16:52.29] |
バオバブは小さな樹じゃなくて |
| [16:54.87] |
教会の建物と同じぐらい大きな樹だから |
| [16:58.43] |
象の群れを丸ごと連れてきても |
| [17:01.06] |
たった一本のバオバブも |
| [17:02.91] |
食べきれないだろうと教えてあげた |
| [17:06.92] |
象の群れを思い描いて |
| [17:09.50] |
王子さまは笑った。 |
| [17:12.09] |
「上に上に積み重ねなきゃいけないね。」 |
| [17:16.58] |
しかし、続けてなかなか鋭い指摘をした |
| [17:21.53] |
「バオバブだって、大きくなる前は小さいんだよね。」 |
| [17:26.62] |
「そりゃそうだよ。 |
| [17:28.74] |
それにしても、 |
| [17:30.13] |
どうして羊に小さなバオバブを食べてもらいたいんだい?」 |
| [17:34.77] |
「何を言ってるの? |
| [17:36.50] |
そんなの当たり前でしょ。」 |
| [17:40.72] |
僕は |
| [17:42.15] |
一人でこの難問を解き明かすことになり |
| [17:44.78] |
散々頭を捻(ひね)った |
| [17:48.44] |
つまり こういうことだ |
| [17:52.60] |
王子さまの星には |
| [17:54.43] |
他の星と同じように |
| [17:56.23] |
良い草と悪い草があった |
| [18:00.58] |
良い草は良い種から育ち |
| [18:03.79] |
悪い草は悪い種から育つ |
| [18:08.12] |
しかし 種は目に見えない |
| [18:11.77] |
土の中でひっそりと眠っている |
| [18:16.26] |
その一つが気まぐれに目を覚ますと |
| [18:19.40] |
伸びをしておずおずと |
| [18:22.80] |
あどけない小さな茎(くき)を太陽に向かって伸ばし始める |
| [18:28.19] |
それが赤蕪(あかかぶ)や薔薇だったら |
| [18:31.28] |
そのままにしておいて構わない |
| [18:34.36] |
でも、悪い草だと分かったら |
| [18:37.59] |
すぐに抜き取らなくてはいけない |
| [18:41.78] |
王子さまの星には |
| [18:43.72] |
そんな恐ろしい種があった |
| [18:47.24] |
バオバブの種だ |
| [18:50.93] |
星の土は |
| [18:52.52] |
何処も彼処(かしこ)もバオバブの種だらけだった |
| [18:57.56] |
少しでも抜くのが遅れると |
| [19:00.27] |
バオバブはもう手が付けられなくなる |
| [19:04.82] |
星全体を覆いつくし |
| [19:07.67] |
根っこが突き抜け |
| [19:09.58] |
穴を開けてしまう |
| [19:12.76] |
小さな星だと |
| [19:14.59] |
殖(ふ)えすぎたバオバブで |
| [19:16.26] |
破裂してしまう |
| [19:19.59] |
「決まりに出来るかどうかだね。 |
| [19:22.34] |
毎朝、自分の身支度(みじたく)が済んだら、 |
| [19:25.66] |
星の手入れに取り掛かる。 |
| [19:28.86] |
芽(め)を出したばかりの薔薇とバオバブは |
| [19:31.15] |
よく似ているんだけど、 |
| [19:33.23] |
それを見分けて、バオバブだと分かったら、 |
| [19:36.14] |
すぐに抜いてしまう。 |
| [19:38.78] |
手間は掛かるけど、 |
| [19:40.65] |
とっても簡単なことだよ。」 |
| [19:44.21] |
「偶には仕事を後回しにしも大丈夫な時ってあるけど、 |
| [19:48.69] |
バオバブでそんなことをしたら、 |
| [19:50.78] |
取り返しがつかなくなるんだ。 |
| [19:54.11] |
例えばね、ある星に、 |
| [19:57.08] |
怠け者が住んでいたんだけど、 |
| [19:59.74] |
その人は三本のバオバブを |
| [20:02.25] |
ほったらかしにしていたばかりに…」 |
| [20:09.47] |
僕は 王子さまの話すとおりに |
| [20:12.57] |
その星の絵を書いた |
| [20:15.92] |
星より巨大な三本のバオバブと途方に暮れる怠け者。 |
| [20:23.00] |
お説教(せっきょう)臭いことを言うのは |
| [20:24.87] |
あんまり好きじゃないけれど |
| [20:26.58] |
バオバブの脅威(きょうい)は |
| [20:28.26] |
地球ではほとんど知られていないし |
| [20:31.61] |
小惑星で道に迷った人が危険な目に遭う可能性は |
| [20:35.16] |
あまりにも大きい |
| [20:38.41] |
だから僕は 一度だけ普段の慎みを忘れて |
| [20:42.46] |
こう言っておこう |
| [20:45.59] |
「おい、子供たち、バオバブに気を付けろ!」 |
| [20:52.38] |
僕は友人たちに警告を与えるために |
| [20:56.28] |
一生懸命この絵を仕上げた |
| [21:00.61] |
苦労して書いた価値があった |
| [21:03.70] |
他はこれほどうまくいかなかった |
| [21:08.74] |
バオバブを書いた時は |
| [21:10.65] |
切羽詰(せっぱつま)って |
| [21:11.93] |
気持ちが高ぶっていたのだ |
| [21:16.93] |
ああ、小さな王子さま |
| [21:21.03] |
こうして僕は少しずつ |
| [21:23.80] |
細やかで憂鬱な君の人生を理解していった |
| [21:29.12] |
長い間、君には美しい夕日しか |
| [21:32.65] |
心を慰めるものがなかったことも |
| [21:37.32] |
僕がこの秘密を知ったのは |
| [21:39.73] |
四日目に朝 君がこう言った時だ |
| [21:44.76] |
「僕、夕日が大好きなんだ。 |
| [21:48.00] |
夕日を見に行こうよ。」 |
| [21:50.73] |
「でも、待たなきゃね。」 |
| [21:53.85] |
「待つって、何を?」 |
| [21:56.96] |
「日が沈むのをさ。」 |
| [22:00.05] |
君はとてもビックリしたようだった |
| [22:03.32] |
そして すぐに笑い出した |
| [22:07.28] |
「僕、まだ自分の星にいるつもりになっていたよ。」 |
| [22:13.12] |
「そうだね。」 |
| [22:15.31] |
誰もが知っているように |
| [22:17.34] |
アメリカが正午(しょうご)の時には |
| [22:19.45] |
フランスは夕暮れだ |
| [22:21.94] |
だから、一分でフランスに飛んでいけたら |
| [22:25.25] |
夕日を見ることが出来るけど |
| [22:27.91] |
残念ながら フランスは遠すぎる |
| [22:32.31] |
だけど君の小さな星では |
| [22:34.75] |
本の少し椅子を動かすだけでいい |
| [22:38.65] |
そうすれば、見たい時にいつでも |
| [22:41.96] |
黄昏(たそがれ)を眺めていられる。 |
| [22:45.54] |
「僕ね、一日に44回も夕日を見たことがあるよ。」 |
| [22:52.73] |
そう言って、暫くしてから、こう付け加えた。 |
| [22:59.56] |
「ねぇ 悲しくてたまらない時って |
| [23:03.81] |
夕日が恋しくなるよね。」 |
| [23:07.55] |
「44回も夕日を見た日は |
| [23:10.45] |
悲しくてたまらなかったのかい?」 |
| [23:15.35] |
しかし、王子さまは答えなかった。 |