[00:00.00] |
久しぶりに休日ができたと思っていたら、書道教室の先生を頼まれた。思い返せば、学生の時以来か、ここに来るのは。 |
[00:13.03] |
「どうですか?書けましたか?う~ん、綺麗に書けていますね。へぇ?先生の教え方がうまいから?そんなことないですよ。字は人の心を映す鏡。貴方の字が綺麗なのは、貴方の心の中を映しているからですよ。」 |
[00:38.21] |
先生のアルバイトをいやだと思ったことはない。教室に来る生徒の皆は僕のことを慕ってくれる。それは書道家である父の威光かもしれない。でも…ここに来ると落ち着く。 |
[00:57.78] |
静かな住宅街の一角にあるこの教室の窓からは、小さな日本庭園が見える。手を休めて、窓の外に目をやると、雪が降っている。いつのまに降り出したのだろう? |
[01:18.49] |
「ふわ~もう結構積もってるなぁ。はぁ~息が白い。」 |
[01:31.42] |
もうだいぶ前から降っていたのかもしれない。庭の草木はほとんど雪に覆われて白くなっている。 |
[01:41.04] |
「彼女も今頃雪見てるかなぁ…なんて。」 |
[01:49.03] |
手の平を差し出すと、雪がふわりと落ちてくる。でもすぐに姿を変えて消えてしまう。 |
[01:58.46] |
「まるで…彼女みたいだ。」 |
[02:03.32] |
このまま雪が降り積もって、世界中を白く染め上げればいいのに。何も見えなくなるくらい…すべてを、白く…白く…そして、嫌なことを、忘れたいことを全部消してくれればいいのに。 |
[02:31.37] |
『吾が恋は現在もかなし草枕多胡の入野の奥もかなしも』 |
[02:41.72] |
僕は悲しい恋をしている。きっと未来も、それは変わらない。 |
[02:51.18] |
こんな弱気になるなんて、僕らしくないな… |